東洋経済新報社が発表する『住みよさランキング』で7年連続1位を獲得し(※)、特に若い世代からの人気を集め住宅都市として発展している千葉県印西市。子育て世代から人気を集める同市に、高齢者にとっても「住みよい」まちづくりの工夫についてお伺いしました。

※東洋経済新報社プレスリリース 第25回全都市「住みよさランキング」(2018 年)

千葉県印西市市長板倉正直様

プロフィール

板倉 正直 様

印西市長

昭和21年に印西町(現印西市)に生まれる。昭和50年に印西町議会議員に初当選し、以降10期連続当選を果たす。平成24年印西市長に当選、現在2期目を務める。

介護職の人材確保のためには事業所のPR活動が有効

——現在介護人材の確保や介護事業所の負担軽減のために行なっていることはありますか?

平成28年度から「印西市介護職員初任者研修費用助成事業補助金交付要綱」を整備し介護職員確保に力を入れています。諸条件はありますが介護職員初任者研修課程を修了し、且つ市内の介護保険サービス事業所に就業する者に対し、1人5万円を上限に助成事業を行っています。介護職員初任者研修とは、昔でいうヘルパー2級相当の資格になります。

また、平成29年度の「介護予防普及啓発講演会」にて、来場者の出入り口スペースを利用して、市内5ヶ所の特別養護老人ホームの「就職相談会・介護のお悩み相談会」のブースを設け、施設のPRを行う機会を設けました。今年度も同様に講演会を開催する予定がありますので、施設の担当者とご相談の上で検討したいと考えています。

この取り組みにより相談窓口にいらした方もいらっしゃったようなので、まずは施設を知ってもらうという点において、住民の方がいらっしゃるところに積極的に出ていただくことも有効であると考えています。 施設の方からも、今後もPR活動を積極的に行なっていきたいという声が多く挙がっており、 PR活動の必要性は大いに感じています。

——印西市の事業所で、市の支援策を利用した事例について教えてください。

個人に対しての助成になりますが、印西市介護職員初任者研修費用助成事業補助金を利用した方の中に、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や、 地域密着型通所介護(利用定員18人以下の小規模デイサービス)に就業している方がいます。始めたのは平成28年度ですが、平成30年度までの3年間で4名の方に助成しています。今後もこのような助成事業を続けていくことで、印西市内の介護人材を確保していきたいと考えています。

千葉県印西市市長板倉正直様

事業所の声を聞きながら、高齢化に伴う課題の対策を

——事業所が相談しやすい工夫はされていますか?

在宅医療・介護連携に関する相談窓口を高齢者福祉課包括支援係に設置し、地域の医療・介護関係者にホームページなどで周知しています。あとは通所介護事業所連絡会と、特別養護老人ホーム連絡会を各々年3、4回開催、他の事業所も参加できる研修会を年1、2回開催しています。連絡会や研修会には年間約延べ200人が参加しており、知識や技術の習得だけでなく事業所の職員の方々がお互いに顔の見える関係作りをすることができます。これらの取り組みを通して仕事上の悩みを一人で抱え込むことがないよう、相談しやすい環境づくりの支援を行っています。 

——人材確保における課題について、現状考えている対策を教えてください。

市内の介護保険施設の施設長などから、介護職を募集しても集まりにくい現状があると伺っています。印西市内で他に時給1000円を超える就業先があるなかで、介護職のなり手を確保することは非常に厳しいとおっしゃっていました。

次期の高齢者福祉計画及び介護保険事業計画の策定タイミングにおいては、令和元年度中にアンケート調査を実施し、介護保険サービス事業所や介護職員の方が課題として感じていることを汲み取ることができればと考えています。 その結果を受けて、市の事業に反映が可能なものがあれば反映していきたいです。

また、現在市内の介護保険サービス事業所の一部において、外国人の技能実習制度を利用した受け入れが始まっています。外国人の方の支援についても各所から声が上がっていますので、機会を捉えて事業所の方々の意見を伺いながら、どのような支援が必要か検討していきたいと考えています。

——印西市は若い世代が多い印象がありますが、高齢化に伴う課題はありますか?

市内では、5圏域に分けて地域包括支援センターを設置しています。圏域により高齢化率に差があり、市役所周辺地域など高いところでは31.1%、千葉ニュータウン周辺の低いところでは12.7%となっています。高齢化率には差が見られますが、全圏域共通して高齢者の増加に伴う要介護認定者や認知症高齢者、独居や高齢者世帯の増加と、それを支える世代の減少が課題です。

千葉県印西市市長板倉正直様

高齢の方が、「住んでよかった」と思える街を作りたい

——高齢者が住みやすい街であるための工夫はありますか?

現在の印西市全体の高齢化率は22.3%ですが、20年後には30〜40%になる地域もあり高齢化が進んでいます。印西市では介護予防の充実を重点課題として掲げ、活気と団結力のある地域のつながりが強い街を目指して、住民主体による地域づくり型の『いんざい健康ちょきん運動』に取り組んでいます。令和元年8月末現在で67グループ、1500人を超える方が参加されています。

この取り組みでは、筋力運動を行うことで筋力をつけ、運動機能の維持・向上を図ることで、日常生活を楽しめる身体作りを目指しています。地域の人達が『いんざい健康ちょきん運動』で知り合って会話をすることで、人がつながり、支えあい、さまざまなコミュニティが生まれ、健康管理等に役立っています。みんなで笑い合い、生活のアドバイスをお互いに行うことで健康にも繋がります。 

孤独に家にこもりがちになると、老化に繋がるので、社会や地域の活動に参加することで、みんなで仲良く健康になってもらいたいと考えています。このような取り組みを通して、高齢を迎えた方々が生き生きと安心して「住んで良かったな」と思えるような街作りをしたいと考えています。

——予防介護において重要なことは何ですか?

もちろん、市としてもご支援させていただきますが、ご自身で健康管理をすることも大切です。私も病気にならないような工夫を人生の中に取り入れながら生活することを心がけています。何十年も寝たきりになってしまっては、家族にも迷惑がかかるし、莫大な医療費もかかってしまいます。

私も自分で編み出した健康法があります。とても簡単なことで、朝早く起きて新鮮な空気を吸って散歩をするだけなんです。それだけで高かった血圧が正常になったんですよ。あとは、人生における目標を持つことも重要です。私の場合は、「この街を改革するんだ!」という気持ちで毎日仕事をしています。自分の体は自分で守るということを多くの人に意識して生活して欲しいと思っています。

——最後に、印西市の介護職員の皆様へお伝えしたいことはありますか?

団塊の世代が後期高齢者となる2025年が目前に迫っています。高齢世代がさらに高齢化し、介護を支える現役世代が減少する2040年を乗り越えるために、今後介護に携わる皆さんのお力がより一層必要となります。印西市民の皆様がお元気でいるときも、介護が必要になっても、住みやすいと感じていただける印西市を皆さんと一緒に目指していければ幸いです。