介護業界では、採用時に経験者の需要が高いとされています。しかし、社会福祉法人 南高愛隣会では、経験者だけではなく未経験者や異業種からの職員採用を強化しています。未経験者が活躍しやすい環境や挑戦しやすい職場づくり、フォロー体制を実現した方法を採用担当の下田様にお伺いしました。

プロフィール

「挑戦したい」想いを応援!未経験者が活躍する職場環境づくりの方法-社会福祉法人 南高愛隣会-
下田 博之様

社会福祉法人 南高愛隣会 採用担当

飲食業界にて業務経験後、2012年に社会福祉法人 南高愛隣会へ入職。入職後から、中途職員の採用担当や企画業務に従事している。

未経験者や異業種からの人材確保、さまざまな経験値を活かす採用を目指して

――未経験者や異業種からの人材採用を進めようと思ったきっかけは何ですか?

介護経験者や資格保有者に限定せず、多様な人材の視点を取り入れることが必要だと考えたことがきっかけです。「福祉」と聞くとどうしても介護や支援が必要な方への対処には、はじめから高度な知識やスキルが必要だと思われがちです。しかし、蓋を開けてみると実情はそうではありません。スキルや経験は後々身につくもので、色々な活動のためには、新しい発想が必要です。そのため、新しい視点を取り入れようと、未経験者や異業種からの人材を積極的に採用しています。また、2020年度からは新卒採用(無資格者枠)もスタートしました。

現在は年間約70名が入職しています。新卒者は約20名、残りが中途採用者です。中途採用者の2割程度は未経験や異業種からの就職者です。飲食業や対人営業の経験者、スーパーの店員からの転職など介護未経験の人材が活躍しています。

――採用選考時に着目している点はありますか?

「きちんと相手の立場に立って物事を考えられるか」「相手の思いをきちんと汲み取れるか」を重視して見ています。当法人の利用者さまの多くは障がいをお持ちです。言葉の言語化が不慣れな方や、障がいによって動作がゆっくりしている方もいらっしゃいます。私たちと同じようにコミュニケーションを取ることが難しい方も多いため、いかに利用者さまの「声なき声」に耳を傾けて支援ができるかという点は大事にしていますね。

――経験者と未経験者の採用プロセスに違いはありますか?

両者の採用プロセスで特に変えている点はありません。ただ、未経験者は、福祉の現場で働くことに「心理的ハードルが高い」と感じることが多いようです。そのため、不安を解消するべく、施設見学をしてもらうことを大切にしています。1つの建物の中に複数の事業所があるため、面接の前後などで時間を取り、それぞれの事業所の一日の流れや仕事内容を説明し、実際に勤務する場所にはどのような利用者さまや属性の方達がいるか、自分にはどの事業があっているかを見て、決めてもらっています。そのうえで最終的に応募するかどうかを決めてもらいます。

未経験でも学びやすい・挑戦しやすい職場環境づくりが大切

――未経験者受け入れ時の、研修やフォロー体制について教えてください。

現場では約3カ月間相談係がついてOJTで指導しています。基本はペア制で勤務し、困りごとがあるときや利用者さまの特性・接し方が分からないときには、相談係に聞いて業務を進めてもらうようにしています。最初から利用者さまと1対1で関わるのは難しいので、支援の仕方を丁寧に教えています。また、OFF-JTでは、座学研修を前期、後期に分けて実施しています。集合研修を取り入れており、社内での就業規則やルールの確認、虐待防止に関する研修、知的障がいの方の特性についての研修、法人の理念についての研修などを行っています。

法人全体では年に一回、全職員を対象とした全体研修を実施し、各事業所の取り組み事例を発表しています。成功失敗を問わず発表しあうので、事例を学ぶきっかけづくりになっていますね。また、当法人は過去に虐待事案や事業の受け入れ停止を経験したため、同じ過ちを繰り返さないように、法人の方針や理念を改めて全体で確認する場にもなっています。

また、事業所によっては月に1回ケース会議を開いている事業所もあります。当法人内のグループホームでは、担当者が週に1度集まって、今後の支援のあり方、ケアプランの作成方法などを見直しています。それぞれが意見を出し合い、「この利用者さまは、今○○で困っているらしいんです。」「じゃあこういう支援をしていきましょう」と情報共有や相談をしながらより良いケアの提供ができるようにしています。

――未経験者の職員をフォローするうえで気を付けていることは何ですか?

なるべく一人にしないことを意識しています。誰にも相談できない環境だと、分からないことをそのままにケアを進めてしまい、思わぬところで利用者さまにとって虐待となってしまうケースもあります。まずは相談係に業務内容を相談しながら、福祉の基礎知識を身につけてもらえるようにしていますね。何が良くて、何が良くないかの境界線を、業務をしながらきちんと学べるような体制を整えています。

――未経験からキャリアアップしている人材の特徴はありますか?

「挑戦したい」「利用者さまのためにこういうことをしたい」といったチャレンジ精神のある方が活躍していますね。法人としても、昔からいろいろなモデル事業や制度への取り組みを続けており、挑戦する心を大切にしています。その気持ちに共感して、「やりたい」と思ったときに実行できている職員は、すごく活躍できているんじゃないかと思います。

――未経験者に対してのキャリアアップ支援はしていますか?

未経験者の方には、チャレンジ制度を設けています。当法人では入職直後は有期雇用を行っています。その後、正職員に挑戦したい人を募り制度に則ってトレーニングを行い、合格した方を正職員として採用する制度です。毎年5~6名手があがり、正職員として勤務しています。そのほかにも資格支援制度を利用して、介護福祉士などの資格に挑戦することも可能です。

「挑戦したい」想いを応援!未経験者が活躍する職場環境づくりの方法-社会福祉法人 南高愛隣会-
▲利用者さまも楽しめるような企画や運営に取り組んでいる職員が活躍しています。

事業所全体で支えていく、一緒に成長していける組織を目指して

――法人として大切にしている考えはありますか?

職員を1人にしないだけではなく、「事業所全体で支える」ことを大切にしています。未経験者や異業種から来た職員は、福祉の現場にいると見逃してしまうような問題に気づいたり、改善案を思いついたりすることがあります。「福祉の現場ではこうすべき」とこだわらず、さまざまな意見を汲み取って法人全体で支えながら良いシナジーを生み出していけたらと思っています。色々な観点を知ることで、「こんな支援の仕方もある」と私たちが学ばさせてもらうことも多いですからね。

――今後の展望を教えてください。

採用の間口を拡げて行きたいと考えています。世の中には就職氷河期世代で不安定な雇用で働く方や、仕事に就けない方たちがいます。その中には、志があるのに活躍できてない方もいるはずです。そういった方たちに間口を拡げて、求人の開拓ができないかと思っています。経験がなくても、挑戦したい意欲があれば支援できる制度を設けているため、是非介護や福祉に挑戦してくれる人材が増えるといいですね。

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