人事評価制度は介護事業所のみならず、どの会社にとっても欠かせないものです。しかし、社員全員が納得できる人事評価制度を構築するのは簡単なことではありません。株式会社アール・ケアでは、「仕事に対する姿勢重視」という珍しい人事評価制度を確立。多様な職種の職員を平等に評価できる基準を定めるとともに、仕事に取り組む姿勢と行動の優れた職員が昇格できる仕組みを作ることで、職場環境の改善も実現しています。どのように制度を考えていったのか、専務取締役の鈴木様に伺いました。
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プロフィール

株式会社アール・ケア 人事部採用責任者 専務取締役
1991年株式会社アール・ケアに理学療法士として入社。会社設立間もない時期から、現場で訪問リハビリの業務を行う一方、人材育成や制度の構築など運営に携わる。
評価プロセスを明確にすることで実現する、汎用性のある制度づくり
――現在の人事評価制度を構築したきっかけは何ですか?
「単なる人事評価制度」にとどまらず、「職員の育成の指標」にもなる制度を作りたかったからです。評価基準として、等級ごとに必要なスキルや資質を明確にすれば、職員が次のステップに進むためには何が必要か分かり、キャリアパスが描きやすくなると考えました。
また、会社の規模拡大に伴い、採用する職種が増えたのもきっかけの一つです。職種関係なく職員を公平に評価できる基準が必要だと感じ、2013年に新たに人事評価制度を設けました。
――これまではどのように評価していましたか?
賞与の額については、基本成果を中心としつつ、人物面や仕事に対する姿勢も加味して、上長が評価して決定していました。昇格についても、上層部の一存で決められていたため、現場からは「なぜあの人が昇格するのか?」などの疑問の声が挙がることもありましたね。
全体的に「どうしてその評価になるのか」というプロセスが不透明で、評価者によって結果にぶれが生じていました。当然、評価を受ける職員にとっては納得しにくい仕組みになっていたと思います。
――新しく人事評価制度を構築するときには何を重視しましたか?
「人材育成にも役立つ内容にすること」「社風に準じたものにすること」「キャリアアップの機会を公平にし、誰もが納得できるような内容にすること」「評価が給与に反映されること」の4点を重視しました。評価制度構築にあたっては外部のアドバイザーに協力いただくことも考えましたが、当社の社風を反映したものにできるよう、独自に内容を考えました。
“人として当たり前のことができる人”を高く評価
――人事評価制度の具体的な内容を教えてください。
具体的な評価基準は3つあります。仕事に対する姿勢や人柄を評価する「情意考課」、職務の出来栄えを見る「職務要件」、マネジメントスキルやリーダーシップなど仕事を行う能力を評価する「能力考課」です。それぞれには具体的な項目が定められており、どの程度できているかによって点数が付けられます。これらの評価に基づき、賞与の額や属する等級、昇格の有無が決まります。
この制度の特徴は、3つの評価基準のうち、情意考課を最も重視していることです。情意考課で一定の点数を得た人のみが、次の職務要件、能力考課に進むことができます。つまり、いくら仕事のスキルが優れている人であっても、情意考課の点数が低ければ、それだけで低評価になってしまいます。

――「情意考課」とはどのような内容ですか?
「仕事に対する基本姿勢」「会社に対する基本姿勢」「品格」「積極性」「協調性」「規律性」「責任性」「自己管理」から成る、社会人としての基礎的能力がどれくらいあるか測るものです。それぞれの項目では、何をもってその能力があるとするのかについての具体的な評価基準を定めています。たとえば「積極性」であれば、「得意、不得意などの理由で仕事を選り好みせず、進んで取り組んでいる」「会議やミーティングの場で議題に合致する具体的な意見や発言を行っている」といった内容が挙げられます。協調性であれば「自らの言動によって他者に迷惑をかけたり、他者のモチベーションを削ぐようなことを行っていない」「目標に対しチームの一員として、それを達成すべく行動している」など基準があり、評価者が具体的なイメージをもって点数を付けられるようにしています。
――3つの項目のうち「情意考課」を最も大切だと考えているのはなぜでしょうか?
「人間性や仕事に対する姿勢が伴っていること」は仕事を行ううえでの大前提だと考えているからです。私は、当社で有資格者のみの採用を行うなかで、資格を持っていることに甘んじて、仕事への意識が低くなっている人を嫌というほど見てきました。
責任ある立場を務めるには、部下が「この人のために協力しよう」と思えるような人間性が重要になってきます。人として当たり前のことをきちんとできるような人材を高く評価できるようにしようと考え、情意考課を最優先にしています。
評価に対する納得感がアップ。職場環境改善にも効果が
――現在の人事評価制度を導入して変わったことはありますか?
評価に対する現場の納得度が高まりました。「どうしてその評価になるのか」という根拠が明確なので、悪い評価でも良い評価でも、被評価者との間に齟齬が生じないのだと思います。昇格についても、現場から「なぜあの人が?」と言われることが少なくなりました。
また、「情意考課」を取り入れたことにより、現場の人間関係の改善につながっていると感じます。以前と比べ、特定の事業所で「入職した人が続けざまに3人辞めてしまう」というような、職場環境に起因するトラブルがなくなりました。そのため、人間関係による離職が減り、定着率のアップにもつながっていると感じます。
――今、感じている課題を教えてください。
新人事評価制度における、「育成の指標」としての役割が現場にまだ浸透しきっていないことです。常日頃から、人事評価制度の内容を頭に置き、それぞれの職員が次のステップに進めるように指導している事業所の責任者もいれば、評価の時期になって慌てて評価基準を確認する責任者もいます。今後は評価の時期に限らず、職員が毎日仕事をするうえでの指針として意識するものにしていきたいです。
――人事評価に悩みを持つ他事業所の方に伝えたいことはありますか?
どの会社にとっても守るべきは、「継続して会社に貢献してくれる人材」だと思います。なので、そういう人材が正当な評価を受けられるような制度にしていくことが大切です。きちんと頑張っている人のモチベーションを下げてしまうようで、適切な人事評価制度とはいえません。
具体的な評価基準や制度の内容は、それぞれの会社や法人で考えられるといいと思います。会社ごと、法人ごとによって、風土や文化、重視する人物像が違います。インターネットで探したものを流用するのではなく、独自に考えることで、内部の実情を反映した制度になるはずです。社風に合った人事評価制度の構築が、優秀な人が長く活躍してくれる組織づくりにつながっていくのではないでしょうか。
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