慢性的な人手不足が続いている介護業界で、SNSを活用して他業種出身者の採用に成功しているHIDAMARI GROUP。SNSの活用を始めて3年目の2019年には採用人数30名中、SNSを見て入職を希望した職員は半数に上り、平均年齢も40代前半から28歳になりました。自社の魅力をしっかりと伝えるSNSの活用方法を同社の代表取締役社長である丹羽さんに伺いました。

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プロフィール

SNSを使った採用に成功! 求職者の心に響くSNSの活用方法とは?-HIDAMARI GROUP-
丹羽 悠介 様

HIDAMARI GROUP 代表取締役社長

前職の美容師を退職後、ボランティアで髪を切りに訪れた介護施設をきっかけに福祉の世界と出会い、2008年にHIDAMARI GROUPを立ち上げる。「生涯のお付き合いを大切に」を理念に掲げ、障害児や障害者の方へ向けた福祉施設を現在、12施設展開。「困っている人を助ける介護の仕事はカッコいい」というイメージを広げていきたいと発信を続けている。

ユーザー目線を意識したことがSNSの活用のきっかけに

――SNSを活用し始めたきっかけは何でしたか?

人材不足といわれている介護業界の中で、より多くの人の目にとまる募集方法はないかと考えたことがきっかけです。SNSの運用を開始するまでは求人広告を配ったり、派遣会社を使ったりしていましたが、採用が思うようにいきませんでした。そこで、情報収集をする際はホームページを開くよりも、SNSから検索をする人が増えていることに着目し、応募方法として活用してみようという考えに至りました。若い世代からの応募が期待できるという理由に加え、広報担当を採用する必要がなく、無料で自社のPRができるという点にも魅力を感じ、2017年7月からSNSを使った募集を実際に開始しました。

――SNSの中でもどのようなツールを活用していますか?

主にInstagram(インスタグラム)を使っています。最初はFacebook(フェイスブック)も使用していましたが、採用のターゲットが20代だったため、Facebookのユーザー層よりも若い世代がよく使っているInstagramにシフトしました。また、Instagramは文章と一緒に写真を載せる必要があるため、会社の雰囲気を知ってもらえるのではないかという考えもありました。

SNSを活用する場合は誰に向けた発信なのか、ターゲット層を決めることがポイントです。万人受けを考えることも大切ですが、人に響かなくては意味がありません。ターゲットとなる層によく使われているツールを用い、興味を示してくれそうな写真や文章の投稿を意識すると良いと思います。

SNSを使った採用に成功! 求職者の心に響くSNSの活用方法とは?-HIDAMARI GROUP-
▲Instagramの投稿例。雰囲気が伝わる写真をチョイス

活用のポイントは「どんな求職者に何を伝えたいか」考えること

――投稿の頻度やタイミングで気をつけていることはありますか?

毎日1投稿以上の頻度で、タイミングはターゲット層の求職者が携帯電話を見る時間帯を意識して投稿しています。例えば、朝の通勤・通学の時間帯やお昼休み、寝る前などです。また、Instagramの活用を始めた頃は、私自身が毎日決めた時間に投稿できない心配もあったため、きちんと決められた時間に投稿できる人を雇っていたこともありました。時間に自由が利き、在宅ワークができる知り合いにお願いし、写真や文章を事前に共有していました。

――写真の選定で気をつけていることはありますか?

働いている人の雰囲気が伝わるよう、スタッフが笑顔で写っている写真を載せるようにしています。建物やレクリエーションの内容に関する投稿よりも、「人の顔」が写っている写真のほうがアクセス数が多いんです。掲載している写真の中でも、画面いっぱいに復数人の笑顔が写っているものや、女性が1人で楽しそうにしている姿が写っているものは特に多くの反響があります。このような「人」の雰囲気が伝わる写真とそうではない写真の差をInstagramのいいね数で検証した際には、300~800もの差がありました。写っているスタッフと応募者自身が一緒に働いている様子を想像できるような写真を選定することで、安心感に繋がると思います。

――文章の内容で気をつけていることはありますか?

「経営者の想い」が伝わるように、分かりやすい文章を心がけています。例えば、求める人物像に合う方に来てもらうため、曖昧な言葉ではなくターゲットを絞ってはっきり伝えられるように「こんな考えで仕事をしているから、こんな人と一緒に働きたい」という想いをストレートに書くようにしていますね。また、新規オープンの事業所がない限り「募集」という言葉は使いません。この言葉を多用してしまうと「人が足りなくていつも募集している会社」と思われてしまいます。あくまでInstagramはホームページの代わりに会社を知ってもらうツールとして活用していますね。発信を続けていると、考えに共感した人から「今募集していますか?」と問い合わせが来るようになります。

また、文章は無理に写真と合う内容にしようとしなくても良いと思っています。写真は採用したい層が興味を示すものを選び、文章では仕事に対する想いをストレートに伝えることが重要です。

SNSを使った採用に成功! 求職者の心に響くSNSの活用方法とは?-HIDAMARI GROUP-
▲Instagramの投稿例。「経営者の想い」が伝わる文章を作成

採用基準は「一緒に働きたい」と思える人物か否か

――SNSを見て応募をしてきた求職者はどのような流れで選考をしていますか?

SNSを見て興味を持ってくれた方のほとんどが、DM(ダイレクトメッセージ)かホームページからチャットを送ってきてくれます。メッセージをもらったら、直接会う前にチャットやLINEで転職の時期や前職のことなど、文章で簡単な質問をします。その後面談と見学、実際の現場で適正を見るために職場体験をしてもらい、現場の意見を聞いて採用の可否を決める流れです。

また、個人のSNSアカウントで連絡することに抵抗がある人はホームページからメッセージを送ってもらうことが多いです。その際、メッセージを送るツールをメールではなくチャットに設定しておくと、気軽に連絡してきてくれます。弊社の採用ターゲット層を考慮し、LINEのように使えるチャットにしています。

――SNSを見て応募をしてきた求職者を採用する際に気をつけていることはありますか?

求職者には「この会社でこの仕事をしたいと思えるか」を意識して確認しています。求職者の中には実際に話を聞き、業務の体験をすると、SNSを見て想像していたこととのギャップを感じる人もいます。しっかりと働いていけるのか求職者自身に考えてもらって自己決定するように促しています。また、現場の声はとても重要です。一緒に働くのは現場の職員なので、選考時の職場体験後に「この人と一緒に働きたいと思えるか」を聞いています。話を聞いて採用が難しいと判断した場合は、求職者にも納得してほしいので、その理由をきちんと伝えています。

SNSの活用は「求める人物像」の採用につながった

――SNSの活用をし始めてから応募数や採用数などに変化はありましたか?

応募者数、採用数ともに大幅に伸びています。SNSを始めた2017年以前の応募者数は1年を通してわずか3~4名程度で、そこにリファラル採用者(社員紹介採用者)を加えて、ようやく5~6名の人員確保ができるような状態でした。しかし、SNSの運用開始から2年が経過した2019年の応募者数は80名で、そのうちSNS経由でDMをくれた応募者は30名にも及びました。SNSを見た上でホームページのチャット使った人もいると思うので、実際にはもっと多いかもしれません。応募いただいた中から実際に採用をしたのは38名なのですが、そのうちの15名はSNS経由で連絡をくれた方です。

また、SNSからの応募者数と採用数の増加に伴い、リファラル採用者も増えています。SNS経由で入職して既に働いている職員は、会社の考えや想いにより深い理解があることから、人数だけでなく求める人物像に近い求職者が入職してくれる確率も高くなりました。

――応募者の層や質に変化はありましたか?

採用ターゲット層向けに若い世代のスタッフの写真を選定したことで、応募者のほとんどが写真と同世代の方になりました。さらに、文章で発信している想いに共感してくれる人のみが応募をしてくれるという質の変化がありました。SNSは求める人物像の求職者のみを募る採用フィルターの役割を果たしていると感じています。経営者の想いを知らずに入職することは早期離職の原因になりがちですが、SNSがフィルターになり、会う前の応募段階からミスマッチが防げていると思います。

さらに、SNSは全国どこに住んでいても弊社を知れるツールです。そのため、愛知県だけではなく、東京から沖縄まで幅広い地域から応募があります。実際に県外出身者も多く勤務してくれています。働く場所を大事にするより、働く環境の方が気になる人が多い証拠だと思います。もちろん私生活の関係で引っ越しが難しい方もいると思いますが、人生の中で仕事をしている時間は長く、楽しく仕事できるなら引っ越しをしても良いと考えている人が多いと分かりました。

――離職率に変化はありましたか?

2017年以前の離職率は10~15%でしたが、ここ3年は3~7%になりました。SNSの発信や職場体験を通して、会社を理解して入職してくれているので、入職後に感じるギャップが少ないことが理由だと感じています。また、リファラル採用が増えたのは会社を好きな職員が多いからだと思います。

職員が会社を好きになってくれることで離職率が下がるだけでなく、紹介によって弊社が求めている人物像に当てはまる人材が入職してくれるという、とても良い循環になっていますね。

介護の仕事を知ってもらうためにはコミュニケーションツールの活用が不可欠

――今後考えている人材の採用方法はありますか?

今後はInstagramのライブ配信やラジオ配信を考えています。Instagramは一方的な配信になっていたので、次は求職者とより身近にコミュニケーションが取れるツールを使っていく予定です。ライブ配信は質問のメッセージに対して、リアルタイムで回答ができますし、ラジオはリスナーの方と直接電話をしながら話すこともできます。通勤や通学時の時間に配信すれば、その人の生活のルーティーンに入ることができ、より弊社や介護業界を知ってもらえる機会に繋がると考えています。

――SNSの活用を考えている採用担当者の方へメッセージをお願いします。

私は介護業界で人手が増えない要因は、「この業界を知らない人が多いだけ」だと感じています。SNSを活用すれば、多くの方に自社の施設や職員について、気軽に知ってもらえます。そのためには、必ず毎日投稿し続けることが重要なポイントです。なかなか思いつかない日は一言でも良いですし、写真が難しければTwitterでも良いと思います。Twitterは写真なしでも投稿ができるので、SNSの運用に慣れるにはおすすめのツールです。良いなと思った投稿はどんどんリツイートで拡散されていくので、どんな投稿の反応が良いのか分かりやすいと思います。毎日投稿することで、多くの人の目に触れ、フォロワー数が増えていくので、まず続けることを目標に始めていただきたいです。私も私個人の考えに興味を持っていただいた方向けにTwitterで発信をしています。

2020年8月時点で、弊社のInstagram、Twitterのフォロワー数はそれぞれ1万人を超えました。毎日SNSで発信し続けるのは簡単ではありません。でも日々投稿するからこそ、出来事を振り返って思考を整理する時間が作れますし、発信するからには企業としてレベルアップしていかないといけないという責任感も生まれます。SNSを活用した採用で成功できたのは、SNSという手段を選んだということだけなく、日々考える時間を確保できたことが大きかったと思っています。

SNSに限らず、福祉・介護業界全体がもっと団結して、世の中に介護の仕事を知ってもらう方法を一緒に考えていきたいです。

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