もともとAI開発をメインに展開してきた株式会社エクサウィザーズ。同社が「介護」の分野に着目し、AIを活用しながら質の高いケアの担い手を増やしていきたいという思いから、認知症ケア「ユマニチュード」の技法を利用した介護職員育成研修を作成しました。現在約1万人が受講している研修の内容や設計背景を、同社にてCare Tech部の部長を務める前川様にお伺いしました。

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プロフィール

ユマニチュードとAIを活用した介護技術研修とは-株式会社エクサウィザーズ-
前川 智明 様

株式会社エクサウィザーズ (Care Tech部部長)

ソニー株式会社、外資系戦略コンサルティングファームへの参画を経て2019年3月同社へ入社。入社後からユマニチュードとAIを組み合わせた独自のサービス開発に従事している。現在ではCare Tech部の部長を務め、介護・医療領域におけるAIソリューションの提供を通じて、超⾼齢社会に代表されるようなさまざまな社会課題の解決に取り組んでいる。

AI開発に向けて、まずは「ユマニチュード」の普及へ

ーーAI開発をするエクサウィザーズがユマニチュードに着目したきっかけは何ですか?

ユマニチュードを広める活動をしている本田美和子先生(※1)との出会いがきっかけです。当社では、以前から介護領域にて、AIを活用したより良いケアの提供ができないかと考え、研究を進めていました。そのなかで本田美和子先生と知り合ったことで、AIを効果的に活用できそうなユマニチュードというケア技法にたどり着きました。

「ユマニチュード」とは、その人の人間らしさを大切にしながら「見る・話す・触れる・立つ」を4つの柱としたさまざまなケア技法を実践していく体系的なメソッドです。「ケアとは何か?」「ケアする人とは何か?」を論理的に問い、かつ実践的な技術を習得する体系ができている技法のため、AIと比較的相性が良く、開発に適していると考えました。

(※1)日本ユマニチュード学会代表理事。ユマニチュードの実践、教育、研究に携わる。現在、国立病院機構東京医療センターにて総合内科医長も務めている。

ーー当時、介護業界でユマニチュードへの関心は高かったですか?

ユマニチュードのケア技法について、簡単な紹介としてはTVや新聞での報道もあり、認知度は上がってきていたものの、実際に日本で実践する人が学べる環境ではありませんでした。そのため、ユマニチュードの普及を進めていこうと、「ユマニチュード研修」を企画し研修運営を始めました。

研修は2015年から開始しましたが、これまでに前例のない研修でした。ユマニチュードはフランスで生まれた技法であり、当然フランスの文化や介護現場を前提に設計されています。日本とフランスでは、文化や働いている医療・介護職員の環境が違うため、日本の現場に適用するのは大変でしたね。今でも試行錯誤を繰り返しながらブラッシュアップを行っています。

累計約1万人が参加している「ユマニチュード研修」

ーー実際の研修内容はどういったものでしょうか?

「専門職向け」と「施設向け」の2つに分けて実施しています。

専門職向けの研修は、入門編・実践編の2つのカテゴリーに分けています。入門編では座学を中心としたユマニチュードの哲学を学び、ワークを交えながら4つの柱やケアに関する5つのステップを指導していきます。実践編では、ユマニチュードのケア提供技術を実際にベッドサイドで行いながら教えています。研修の合計時間は、入門編と実践編合わせて3日間で約24時間です。

施設向けの研修では、4日間をかけて現場での実践を伴う研修を行っています。ここでは個人ではなくチーム単位でユマニチュードを用いたケアの方法を学びます。実技研修の際は、施設のご利用者様が協力してくださるので、実際の現場に限りなく近い環境で手技を学ぶことが可能です。哲学のような座学から、ユマニチュードを取り入れたケアの実践的な実技研修までを実施しています。

ーー現在の研修の実績はいかがですか?

施設向け研修は2019年秋ごろからスタートしていて、今までに約10施設ほどで開催をしました。専門職向けの研修は2015年からスタートし、累計約1万人の方に受講いただいています。政令指定都市を中心に全国で毎年50回程度研修を開催しています。今後も開催回数や実施場所を増やして、ユマニチュードの普及に努めていきたいですね。

ーー研修後の受講者からの反響はいかがですか?

入門研修後に5段階のアンケートを取った際には、回答の9割以上で「満足している」という高い水準の評価をいただいています。ユマニチュード自体は教本やDVDなどが普及していますが、実際に対面での研修やインストラクターからの指導は他にありませんでした。研修を受けて実践することで、新たな気づきや発見もあり、好評価に繋がっているのではと考えています。

ユマニチュードとAIを活用した介護技術研修とは-株式会社エクサウィザーズ-
▲研修では、ユマニチュードのケア技法を実践を踏まえながら学んでいきます。

研修後の実践は「AI」がコーチング

ーー介護×AIの取り組みの背景を教えてください。

ユマニチュード研修を実施する中で、研修受講者が所属している施設へ戻ったあとの技術や考えの「定着」の部分に課題を感じていました。実際に学んだスキルや技術を現場で実践してみても、それが正しくできているかは本人では判断できないことがあります。また、研修受講者は全国から集まるため、現場できちんと実践できているかを研修インストラクターが判断する手段がありませんでした。

その中で「研修で学んだケアを実践している受講者とコミュニケーションを取りながら指導できる方法はないか」と考え「ケアコチ」というAIアプリを開発しました。ケアをしている動画をスマートフォンで撮影し、その動画に対して研修インストラクターが遠隔指導できるアプリです。アップロードされた動画には、動画でコメントを返すこともできるため、受講者が現場に戻ったあとでも、実際のケアの様子を見ながら指導が行なえます。

また、アプリを活用していく中で、AIの動画解析により指導内容や職員の方がつまずく内容の傾向も見えてきました。このように、AIを利活用することでケアの問題点や改善点を洗い出し、将来的には研修インストラクターの代わりとしてAIがコーチングしていくような方向性も視野に入れながら、より良いケア方法を提供していければと考えています。

ーー今後の展望を教えてください。

当社の方針として、質の高いケアを国内に広め、安心して年を重ねられる社会を作っていきたいと考えています。ユマニチュード研修を皮切りに、施設や在宅を問わず介護ケアの担い手を増やしていきたいですね。また、ユマニチュードのインストラクターも全国的に増やしていけたらと考えています。現在全国には約50名のインストラクターがおり、当社にも7名在籍しています。インストラクター向けの研修も今後設計していく予定です。

また、AI開発にも引き続き力を入れていきたいと考えています。現在、ケアコチ以外に「ケアウィズ」というAIアプリの開発も進めています。ケアウィズは、スマートフォンで簡単にユマニチュードを学べるアプリです。今後はユマニチュードを手軽に学べる環境づくりの支援も積極的にしていきたいですね。

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