年々介護施設が増加する中で、働く職員の育成は介護業界において重要な課題になっています。社会福祉法人寿宝会では、無資格・未経験の入職者が増えたため、人材育成の方法について職員の声をもとに大幅に見直しを行いました。職員の意見を現場教育やキャリアパス、評価の仕方へ反映させた方法について、同法人の副理事長である長木さんに詳しいお話を伺いました。

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プロフィール

成長したいと思える職場づくり!職員の声を人材育成制度に取り入れる方法とは-社会福祉法人寿宝会-
長木 彰範 様

社会福祉法人寿宝会 副理事長

大学を卒業後、2005年3月に社会福祉法人寿宝会へ入職。総務部で経理業務を担当する傍ら、職員の増加に伴い人材の育成に携わる。2019年から同法人の副理事長に着任し、職員が成長できる環境づくりに力を注いでいる。

職員の層の変化が教育を見直すきっかけに

――人材育成に力を入れようと思ったきっかけは何でしたか?

入職してくる職員の層の変化がきっかけです。当法人が介護事業を始めた1997年から約10年間、入職してくるのは介護職の学校ですでに資格を取得している新卒の方が大半でした。しかし、徐々に若い世代や他の業種から転職してくる無資格・未経験の方の応募が少しずつ出始め、2015年頃から顕著に増えてきました。有資格者であれば経験がなくても知識がある状態から教育できるのですが、無資格の方は知識もない状態なので、そこに合わせた育成方法を検討する必要が出てきました。

そこで、2015年に人事部を設立したのを機に、人材育成に関する制度の見直しを行いました。制度を作る際に大事にしたのは、職員の声です。働いている全職員のために作る制度なので、上層部だけで決めることは避け、現場の声を取り入れながら設計しました。

成長したいと思える職場づくり!職員の声を人材育成制度に取り入れる方法とは-社会福祉法人寿宝会-
▲「生活支援技術研修」では実践的な教育をしています

職員の声を聞くことで実現させた制度

――具体的にはどのようなことを行いましたか?

まず、教育体制を充実させるために「研修制度」を整えました。職員には、学びたい内容や希望の講師像をヒアリングし、出てきた意見を基に、それぞれ専門性の異なる3名の外部講師に研修を依頼することになりました。行われている研修の内容は、基本の介助方法について新たな技術を身に付ける「生活支援技術研修」や、その都度必要なテーマを決めて知識を身につける「施設内研修」、現場で各利用者様に合わせたケアを学ぶ「現地指導研修」、リーダーの役割や後輩指導方法を学ぶ「リーダー研修」などさまざまです。さらに、介護福祉士の資格取得を目指す職員のために、講師の1人に受験対策講座も行ってもらっています。職員の習得状況の確認や新たな課題を発見して改善を図るために、同じ講師に継続して研修をしていただいてます。

また、無資格や未経験の入職者の増加とともに、早期退職者が増えたことも課題に挙がりました。今後の関係性に影響するかも知れないという不安から、同じ職場の職員に悩みを打ち明けられないことが原因で、早期退職につながったようです。そこで、気軽に悩みの相談ができるように、法人内の別の施設で勤務する経験豊富な責任者との定期的な面談をすることにしました。この早期退職者を防ぐ取り組みを「メンター制度」とし、2018年からOJT研修の一環として現場教育で行っています。

教育、メンタルサポートについて整えた段階で、その次に「キャリアパス制度」を確立しようと動き出しました。

――「キャリアパス制度」はどのように決めましたか?

「キャリアパス制度」とは目標となるキャリアを職員に分かりやすく理解してもらうための制度です。「仕事力」と「人間力」という評価基準を設け、職能等級を1~9等級まで段階分けをしました。「仕事力」とは、等級ごとに作成された業務をマニュアルに記載されたとおりに行える力のことで、「人間力」とは、等級ごとに定められた理想の人物像であり続けられる力のことです。仕事力は、介護技術が最も高いと多くの職員から評価されている介護士の仕事レベルを基準としています。また、人間力についても、各立場にふさわしい姿のイメージなどを職員にヒアリングしました。この「仕事力」と「人間力」を組み合わせて等級を定めることで、各役職に就くために必要な技術や知識、求められる姿勢が明確になるようにしています。「キャリアパス制度」によって自分の目指す等級が分かることで、自分には何が足りないかが明確になり、「研修制度」でさらに学びを深められるという効果も期待できます。

また、「キャリアパス制度」の確立に伴い、「人事考課制度」や、「賃金制度」の見直しに取り掛かりました。

――「人事考課制度」や「賃金制度」はどのように見直しを行いましたか?

「人事考課制度」では、各等級で定められた仕事力と人間力の出来栄えを評価するようにし、「賃金制度」で各等級に対する昇給額を定めました。定められた基準をクリアすると、等級が上がるだけでなく給与も上がります。努力をした人が正当に評価をされるため、職員が納得感をもって働けるようになると考えました。

人材育成に関する4つの制度が連動する仕組みができあがりました。

成長したいと思える職場づくり!職員の声を人材育成制度に取り入れる方法とは-社会福祉法人寿宝会-
▲職員向けに人材育成制度の説明をしています

人材育成制度の確立は仕事への意欲を向上させた

――さまざまな制度を開始したことで、職員にはどんな変化がありましたか?

5年間の中で徐々に制度を整えたため、効果はまだ検証中の部分もありますが、2つのことを実感しています。

1つ目は、「職員のモチベーションの向上」です。「キャリアパス制度」によって自分の階級を知り、目指す目標に向けて成長したいと意欲的に「研修制度」を活用してくれています。その1つの成果として、2020年に介護福祉士の資格取得試験を受験した当法人職員の合格率が92%だったことが挙げられます。制度の連動によって、努力したことに対して正当な評価が得られ、納得のいく給与が受け取れることも、職員のモチベーションの向上につながっていると感じますね。

また、成長意欲のある応募者が増えています。未経験の方への教育体制やキャリアパスについてホームページで公開したところ、自身の成長する流れがイメージしやすいためか、入職を希望する理由として「スキルアップ」や「キャリアアップ」という言葉を挙げる方が多くなりました。

2つ目は、「職員の離職率の改善」です。特に早期離職を防ぐ目的で始めた「メンター制度」の効果が少しずつ出てきています。まだ効果を実証するには数年かかりますが、2018年の早期離職率11.3%に対して、2019年度末では10.4%まで下がりました。気軽に悩みを話すことができ、問題の解決ができるメンター制度を導入した成果が出てきたと思っています。また、勤続10年以上の職員が年々増加しており、ここ数年は毎年10名以上の職員が10年目を迎えています。当法人を設立した約20年前から制度の見直しを行うまでは、研修でスキルアップしたことが人事考課とうまく結びついておらず、成長意欲を感じる職員が少ない状態でした。しかし、目標をもって仕事に取り組める環境ができたことで、働くことへの満足度が高まり、長く勤務してくれる職員が増加したと考えています。

人材育成に完成形はない

――現在の課題や今後の目標はありますか?

人材育成制度は徐々に職員に浸透してきましたが、人材の育成方法には完成形がないと思っています。今後も講師の方や現場の職員の意見を聞きつつ、問題点の改善をしたり、良いと思った案を取り入れたりしながら、ブラッシュアップしていくことが必要です。

人材育成と人手不足は介護業界において大きな課題です。人材育成に力を入れることで、利用者様へのサービスの質が上がります。そして、良いサービスを提供することは介護業界で働く人の地位向上につながり、介護職員の増加にも良い影響があると私は考えています。当法人も介護職の地位向上に貢献できるよう、今後も人材育成に力を注いでいきたいです。

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